「外国人雇用管理指針」の見直しと企業が今備えるべき実務のポイント

外国人労働者の受入れ数が年々増加する中、外国人を雇用する企業に求められるコンプライアンスの水準もこれまで以上に高くなっています。厚生労働省が定める「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(外国人雇用管理指針)」は、今年(2026年)から2027年に掛けて3回の改正(適用)が行われます。「外国人雇用管理指針」は、企業が外国人材を適正かつ安全に受け入れるための重要なガイドラインです。以前から問題が指摘されていた「外国人雇用状況届出制度」の運用改善や、2027年4月1日にスタートする育成就労制度への対応を見据えた見直しなど、今大きな転換期を迎えています。

「法改正や指針の更新にどう対応すべきか」「在留資格の手続きと社内労務管理をどう連動させればよいか」といった不安やお悩みを抱える事業者様も多いかと思います。

本コラムでは、入管取次業務を専門とする行政書士の立場から、雇用管理指針のポイントと、事業者が知っておくべき実務上の注意点を分かりやすく解説します。

Contents

01 なぜ今、雇用管理指針の理解が求められるのか?

外国人の雇用においては、出入国在留管理庁が所管する「入管法」と、厚生労働省が所管する「労働関係法令(労働基準法・労働施策総合推進法など)」の双方が密接に関連しています。

入管庁への在留資格認定申請や変更・更新申請では、外国人本人の要件や活動内容だけでなく、受入れ機関側の要件も審査対象となります。特に企業等で雇用される外国人の場合、入管庁は、給与水準や労働条件が適正か、社会保険への加入がなされているかなどを厳しくチェックします。指針に沿った適正な管理が行われていない企業は、申請が不許可になる可能性があるだけでなく、不法就労助長罪や今後の外国人受入れ自体が困難になるリスクもありますので、正しい理解と対応が不可欠なのです。

02 近年の指針改正・運用変化における「3つの要点」

厚生労働省の公式ページで示されているように、外国人雇用管理指針は社会情勢や制度改正に合わせて見直しが行われています。事業者として特に注意すべきは以下の3点でしょう。

① 「外国人雇用状況届出」の厳格化と正確性の確保

事業主には、外国人労働者の雇い入れおよび離職の際に、ハローワークへ氏名や在留資格などを届け出ることが義務付けられています。現在は在留カード番号の記載が必須とされているほか、在留カードが偽造でないことを確認するために「在留カード等読取アプリケーション」の使用も推奨されています。

在留カードの確認漏れや届出の不備は、意図せず「不法就労」を招く原因となります。不法就労助長罪だけでなく、届出の不備にも罰則規定が設けられています。

<罰則規定について>

■不法就労させたり、不法就労をあっせんした人(不法就労助長罪)
⇒3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金またはその併科(2027年4月1日以降は、「5年以下の拘禁刑」「500万円以下の罰金」に引き上げられます。)
※外国人を雇用しようとする際に不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していないなどの過失がある場合には処罰を免れません。

■外国人の雇入れや離職について、ハローワークへの届出をしなかったり、虚偽の届出をした人
⇒30万円以下の罰金

② 雇用形態に関わらない公正な待遇と安全衛生・環境整備

指針では、同一労働同一賃金の観点に基づき、日本人労働者との間の不合理な待遇差を設けないことや、安全衛生教育の徹底が求められています。

特に言葉の壁がある外国人材に対しては、母国語や理解しやすい言語(やさしい日本語など)での安全教育や就業規則の説明が重要です。外国人労働者における労働災害発生率は、全体平均よりも高くなっているというデータもあります。労働災害を防止することは、労働者保護だけでなく企業のリスクマネジメントそのものです。

また、雇い入れ時に労働条件を明示することはもとより、2026年10月1日からは、パートタイム・有期雇用労働者への明示事項として、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が必要となることにも留意してください。

③ 制度改正への対応(育成就労制度への足がかり)

さらに今後、従来の技能実習制度が終了し、2027年4月1日から「育成就労制度」がスタートすることに合わせ、新しい指針が適用されるようになります。「育成就労」の外国人を受入れるためには、育成就労基本方針等の内容に沿った雇用管理が必要です。制度の過渡期である今こそ、自社の受入れ体制・雇用管理体制を見直す絶好の機会です。

03 企業が今すぐ取り組むべき実務

入管手続きと雇用管理を分断させず、一体となって管理することが成功の鍵です。入管取次行政書士の視点から、企業の実務担当者様には、次の3つのアクションをおすすめします。

雇用管理の手続きの中で、在留カードの番号、在留資格の種類、指定書(特定技能などの場合)、在留期間の満了日を把握する仕組みが機能しているか点検しましょう。必要なデータが漏れなくタイムリー収集され、最新の状況にもとづいてアクションが取れるようになっていない場合は、管理リスト(データベース)と運用手順の見直しが必要です。

なお、在留資格の更新手続きは満了日の3ヶ月前から可能です。

在留資格の申請では、雇用契約内容が入管基準を満たしているかがチェックされます。職務内容が認められた在留資格の範囲内(例:「技術・人文知識・国際業務」で単純労働をさせない等)であるかを改めて確認してください。

厚生労働省のHP等で公開されている「外国人労働者の雇用管理改善等に係る自主点検表」を活用し、自社の受入れ状況を客観的にチェックしてみることを推奨します。

04 おわりに:適正な雇用管理が外国人材から「選ばれる企業」への近道

外国人雇用管理指針は、単なる法令遵守のチェックリストではありません。外国人材が自身の能力を最大限に発揮し、安心して長く働ける環境を整えるための「企業向けのアクションプラン」として活用しましょう。

国際的な人材獲得競争が激化する中、コンプライアンスを徹底し、適正な労働環境を提供できる企業こそが、質の高い外国人材から選ばれる時代。このコラムが少しでもお役に立てば幸いです。

入管手続きのみならず、雇用管理や労務リスクへの不安がある事業主様には、専門家への相談をおすすめいたします。

参考:
外国人の雇用 |厚生労働省
外国人の適正雇用について 警視庁
令和5年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省