【お役立ち情報】永住許可に関するガイドライン(2026年10月1日改定)
2026年10月1日に「永住許可に関するガイドライン」が改定されました。全面的な適用は来年度(2027年4月1日)からの申請分になりますが、一部前倒しで適用される項目もあります。
このコラムでは、入管取次行政書士の視点で新しいガイドラインの概要を紹介し、これから永住許可申請を行おうとしている方にとって役立つ情報をお届けします。
01 「永住許可に関するガイドライン」とは
「永住許可に関するガイドライン」は、出入国在留管理庁が永住許可申請の審査に当たって考慮すべき要素についての基本的な考え方をまとめたものです。
法律上の規定(入管法第22条)では、永住許可の要件は3つあります。そのざっくりとした3要件を満たしていると判断するために何を確認するか、どの程度の水準が求められるかについて、より具体的な審査の基本方針を示すものがガイドラインと言えるでしょう。これにより、これから永住許可申請を行おうとする人が、あらかじめ可否の可能性をある程度予想することが可能となります。
ただし、入管法では許可/不許可の判断について法務大臣に広い裁量権を認めています。また、実際の審査においては、個々の事案における様々な事情が総合的に考慮されるため、ガイドラインだけをもって明確な可否の判断基準と捉えることはできません。
02 2026年10月1日改定版「永住許可に関するガイドライン」の概要
このガイドラインは、基本的には2027年4月1日以降の申請に適用されます。ただし、新しく追加された部分や変更があった部分の中でも、”収入”に関する部分については、2026年4月1日以降に申請された分でまだ申請中(審査中)の案件にも適用されます。
法律上の要件は従来通りですが、新しいガイドラインでは審査に当たって”考慮される要素”として明記された項目が増えています。以下、新しく追加された項目として注意が必要なものには【New】と記載しました。
1.法律上の要件
(1)素行善良要件(*)
「素行が善良であること」
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること
*ただし、「日本人/永住者/特別永住者の、配偶者または子」については適用除外
(2)独立生計要件(*)
「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること
*ただし、以下については適用除外
・日本人/永住者/特別永住者の、配偶者または子
・難民の認定を受けている方、補完的保護対象者の認定を受けている方または第三国定住難民の方
①収入【New】
★2026年4月1日以降の申請分から適用
原則として、申請時点で、申請者の属する世帯年収の額が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準(以下「年収水準」といいます。)の額に継続して達しているかを考慮要素とします。
「世帯年収」についての補足
「年収水準」における「世帯」とは住居および家計を共にしている人の集まりですが、以下の点に御注ください。
- 成人した子供など、扶養から外れている者の収入は算入しない。
- 「家族滞在」など非就労資格の者が資格外活動許可を受けて得た収入の額は算入しない。
- 申請者に扶養する親族がいる場合は、同居していない場合も世帯人数に算入する。(外国に住んでいる場合も含む)
②年金【New】
(2027年4月1日から適用)
申請時点の年齢、申請時点までを含む加入対象期間すべての年金の加入状況、および申請時点の年収から推計される将来において受給可能な年金の見込額(以下「受給見込額」といいます。)が、上記の「年収水準」で30年間働き、その期間、厚生年金に加入していた場合において将来受給可能な年金の見込額(以下「受給年金水準」といいます。)に達しているかを考慮要素とします。
「受給年金水準」についての補足
- 受給見込み額が「受給年金水準」に達していない場合であっても、不足分を補填できる金融資産(以下「補填資産」という)があると認められるときは、「受給年金水準」に達しているものと評価する。
- 補填資産額の基準は、申請時の年齢が若いほど低いものとなる。(今後長期に渡って資産形成が可能であることを考慮)
- 「受給年金水準」および「補填資産」についても、原則として同一生計世帯単位で判断する。
※配偶者がいる場合
a)受給見込額→(申請者本人の受給見込額)+(配偶者の受給見込額)
b)必要と考えられる水準→(申請者本人の受給年金水準の額)+(配偶者が申請者と同期間被扶養者として国民年金の第3号被保険者であった場合において受給可能な年金の見込額)
c)補填資産額→上記aとbの差額を補填することが可能な金融資産
(3)国益適合要件
「その者の永住が日本国の利益に合すること」
国益に合するものと認められるためには、単に国益に反しないという消極的なものにとどまらず、積極的かつ具体的に当該外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要がある
考慮される観点・要素
- 出入国在留管理を取り巻く国際環境、日本人口の動向、産業界の人材需給の状況、外国人の受け入れが日本社会に与える影響、家族単位での在留の安定などの様々な観点から考慮
- 我が国の経済・財政、産業、外交、地域社会、教育、医療、社会福祉、文化・芸術・スポーツ等の各分野の維持・発展への貢献・寄与の程度
- 公衆衛生、治安、安全保障上への支障等の程度
具体的な審査項目
ガイドラインでは以下の10項目に分けて説明されています。これらの項目は、それぞれの項目の位置付けによって以下のように分類できるかと思います。
a) 法令遵守(違反があれば国益に反する⇒「消極評価」)
- 入管法に規定する義務の遵守
- 公租公課の支払
- 刑罰法令違反
- 上陸拒否事由への非該当、上陸許可基準への適合
b) 単に「国益に反しない」というだけでなく、将来にわたって積極的に国益をもたらすかどうかの評価
- 長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していること
- 公共の負担とならないこと【New】
- 日本語能力【New】
- 我が国の制度・ルール等への理解【New】
- 学齢期の子供の就学【New】
- その他【New】
それでは、従来からあった項目も含め、一つずつ内容を確認していきましょう。
①法に規定する義務の遵守
各種届出の義務や在留カード常時携帯義務、資格外活動をしない・させない義務など、入管法で定められている義務を守っていない場合は消極評価。申請時点での状況のみならず、過去の義務違反が判明した場合についても、原則として消極評価。
②公租公課の支払
税金、公的年金、社会保険料等を適切に支払っていない場合は消極評価。(原則として同一生計世帯単位での審査)
申請時点で未納がある場合はもちろん、過去に適切に支払っていない状況があった場合も、原則として消極評価。
③刑罰法令違反
過去に拘禁刑や罰金刑、少年法による保護処分を受けた者は原則として消極評価。
④上陸拒否事由への非該当、上陸許可基準への適合
上陸拒否事由に該当する者は消極評価。
申請時点において現に有している在留資格について、上陸許可基準に適合していない場合も消極評価。(現在の在留資格の許可要件を満たしていない状況ではダメということです)
⑤長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していること
a) 引き続き10年以上日本に在留していること
※過去10年以内に、合理的な理由なく一回の出国で半年以上不在とした期間がある場合、または通算して2年6月以上不在とした場合は原則として消極評価。
b) このうち、引き続き5年以上就労資格(注1)または居住資格(注2)で在留していること
注1)ここでの就労資格には、「技能実習」、「育成就労」、「特定技能1号」、「企業内転勤」および一部の「特定活動」は含まれません。
注2)在留資格「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」が含まれます。
☆特例により、10年以上在留していなくても申請可能な場合があります。(下記参照)
c) 現在の在留資格で、最長の在留期間(★)をもって在留していること
★2027年3月31日までは、どの在留資格でも在留期間「3年」が付与されている場合は、特例として「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われますが、2027年4月1日以降の申請からは、文字通り、最長「5年」の在留期間が設定されている在留資格の方は、「5年」が付与されていることが要件となります。
⑥公共の負担とならないこと【New】
★2026年4月1日以降の申請分から適用
独立生計要件に適合している場合は、積極評価となる。
逆に独立生計要件の適用対象から除外されている者(*)であっても、申請者の属する世帯が現に公共の負担となっている場合や、その恐れが現実的であり、そのような状況に至ったことに特段の事情が認められない場合は、この要素は消極評価となる場合がある。
*「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、特別永住者の配偶者または子、および難民等
⑦日本語能力【New】
(2027年4月1日から適用)
日本語能力の熟達度のうち、B1相当レベル以上の日本語能力を有していること。
※ただし、以下のような場合は、その必要性・相当性の観点から考慮対象外となる場合もある。
- 申請者が、高度人材外国人やその家族の場合
- 学校教育法が規定する初等教育または中等教育(つまり、日本の小学校から高校までの教育)を累計6年以上受けた場合
- 永住者の子(親がB1相当レベル以上の日本語能力を有しており、日本で生まれた子に限る)
⑧我が国の制度・ルール等への理解【New】
(2027年4月1日から適用)
「生活・就労ガイドブック」に記載されている事項を中心に、その理解度が一定水準以上であること。
※理解度の確認方法は、出入国在留管理庁長官が指定する方法によるとされています。
⑨学齢期の子供の就学【New】
(2027年4月1日から適用)
申請者が学齢期(義務教育の期間)の子を養育する親である場合は、子が小学校または中学校に通学していること。申請者本人が学齢期である場合は、小学校または中学校に通学していること。
⑩その他【New】
(2027年4月1日から適用)
その者の永住が国益に合するかの判断に資する事情が他にあれば、その事情。
※法務大臣には広い裁量権が認められていることから、この点については様々な観点からの判断があり得ます。ガイドラインでは、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に記載された各施策への貢献・寄与についても考慮要素となるとされています。
2.原則10年在留に関する特例
以下の条件に該当する場合は在留期間が10年に満たなくても永住許可申請が可能です。
※赤字は、今回の改定で厳格化(延長)された部分です。(2027年4月1日から適用)
| 対象者 | 申請までに必要な継続在留期間 |
|---|---|
| 日本人・永住者・特別永住者の配偶者で、実質的な婚姻生活が5年以上継続 | 3年以上 |
| 日本人・永住者・特別永住者の実子等 | 3年以上 |
| 在留資格「定住者」 | 5年以上 |
| 難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けた者 | 5年以上 |
| 特別高度人材(J-Skip) | 1年以上 |
| 高度人材外国人(高度専門職ポイント80点以上) | 1年以上 |
| 高度人材外国人(高度専門職ポイント70点以上) | 3年以上 |
| 構造改革特別区域(特区)内で特定事業等に従事し、その事業において我が国への貢献が認められる者 | 3年以上 |
| 地域再生法にもとづいて認定された地域で、「特定活動」(36号:特定研究等または、37号:特定情報処理)に該当する活動を行い貢献が認められる者 | 3年以上 |
| 外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者 | 5年以上 |
03 新ガイドラインの運用に期待すること
今回の改定はひと言でいうと厳格化の方向です。もともと永住許可を含めた在留審査では、法務大臣に広い裁量権が認められていますが、今回のガイドラインではこの点が改めて強調されています。永住許可については、「特に慎重な審査を行う必要がある」という表現も使われています。
永住者に限らず、日本で暮らす外国人の数が急速に増えている近年、日本人の中には、人手不足を解消するために外国人の受入れを拡大することが必要と考える人もいれば、近所に外国人住民が増えてきたことに何となく不安を感じている人もいるようです。
実際のところ、少子高齢化が進む日本において、現在日本で働いている外国人の方は、納税者であり、日本人と共に社会保障制度や年金制度を支えるメンバーになっています。こういった制度を将来的に安定して運用していくためにも外国人の受入れは必要でしょう。永住許可は、生涯を日本で暮らすことができる安定した法的地位を与えるものなので、審査は慎重に行う必要があるのはもっともですが、外国人から選ばれない国になることもまた国益に反するはず。広い裁量権によって不当に厳しいものや、不合理な判断にならないことを願います。
一方、新しく追加されたいくつかの項目については、共生社会を築く施策としての効果を期待したいところです。日本で長く暮らしていくためには、ある程度の日本語能力や、制度・ルールを理解して地域社会の一員として責任ある行動ができることはとても大事です。そして、外国人の子供も増えている現在、次の世代も経済的に安定した暮らしが出来るようにするためには、学校教育も必要でしょう。今回の新しいガイドラインには、外国人も日本人も安心して暮らしていくために不可欠な、相互理解の基盤が盛り込まれたという見方もできるのではないでしょうか。
新しいガイドラインが適用されることにより追加される必要書類など、まだ明らかにされていない部分もあります。永住許可に関する新しい情報には今後も引き続き注視していきたいと思います。
参考:
永住許可(入管法第22条) | 出入国在留管理庁
永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定) | 出入国在留管理庁
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