留学生の「掛け持ちバイト」には注意が必要

日本に在留する外国人留学生の数は近年急増しており、2025年末の時点で46万人を超え過去最高となっています。在留資格別で見ても「留学」は、「永住者」、「技術・人文知識・国際業務」に次いで第3位(全体に占める割合11.3%)と主要な在留資格の一つです。このような状況の中、留学生の在留管理は入管庁でも重点課題の一つとされており、特に”週28時間の制限”を超える資格外活動違反の調査が強化されています。

このコラムでは、この動きの背景と今後留意しておくべき点について考えてみます。

留学生は簡単にアルバイトができるようになっている

現行制度では在留資格「留学」の方は特別に、新規入国時に空港の入国カウンターで簡単な申請を行うことによって「資格外活動許可(包括許可)」を受けることが可能です。そのため、多くの留学生が初めから資格外活動許可を得て入国しており、入学後はすぐにでもアルバイト等ができるようになっています。

資格外活動には「包括許可」と「個別許可」があり、個別許可では活動の内容(どのような仕事をするか)や期間、勤務先などを個別具体的に記入して申請する必要がありますが、包括許可を受けていれば、その都度申請することなく、短期アルバイトなどの単純労働も含めて一定の範囲内で様々な仕事をすることができます。一定の範囲内というのは、「週28時間以内」という制限のほか、風俗営業等を除くことや、在留資格で認められた本来の活動を行っていること等の資格外活動許可要件の一般原則の枠内ということです。

特に”掛け持ちバイト”は注意が必要

「週28時間以内」のカウント方法は、1つの勤務先での勤務時間ではなく、複数の勤務先でいわゆる”掛け持ちバイト”をする場合は、すべてのバイト先での合計勤務時間でカウントします。また、どの時点からの1週間でカウントしても合計の勤務時間が28時間以内になっていることが必要です。

バイト先である雇用者側も、資格外活動違反は不法就労助長罪に問われることを認識していれば、週28時間を超えるようなシフトは組まないのが通常ですが、掛け持ちバイトをしている留学生が他のバイト先でどのくらい働いているのか把握できていない場合は、知らぬ間に不法就労させていたということにもなりかねません。雇用者としては、掛け持ちバイトの有無や他社での勤務日・勤務時間を常に把握しておくことが求められます。

日本語教育機関との連携により管理が強化されている

入管庁が特に管理を強化しているのは、日本語教育機関(いわゆる日本語学校など)に在籍する留学生です。日本語教育機関には現在、以下のような対応が求められています。

2026年4月運用開始

資格外活動の実態把握や指導の強化

  • 3ヵ月に一度、資格外活動の状況を留学生から直接確認する
  • 掛け持ちバイトをしている留学生についてはとりわけ慎重に確認する
  • 許可内容に違反すると認められる場合は、直ちに指導し、状況を改善する
  • 指導しても改善が認められない留学生や、「雇用主が週28時間を超える勤務を強いている」などの報告があり不法就労が疑われる場合は、最寄りの出入国在留管理官署に報告する

なお、入管庁では「外国人雇用状況届出」を活用して複数の稼働先で資格外活動を行っている留学生を特定し、慎重な確認が必要な留学生の情報を日本語教育機関に提供するとされています。

2026年7月以降の対応

入学時の在留審査で求められる日本語能力(CEFR・A1相当)の確認方法を厳格化

  • 「日本語試験の証明書」、または「日本語教育機関による面接(オンライン可)」での能力確認が必須となる
  • これまでは「150時間以上の日本語学習歴」による確認でも可だったが、今後は不可

CEFR・A1相当とは、語学学習における入門レベルの水準です。日本語学習のために日本に留学するのであれば、事前準備として最低限必要なレベルと考えられますが、これまでは、学習のための意思と能力が明らかに不足している学生も受け入れている実態が少なからずあったということでしょう。

このように日本語教育機関に対する管理が強化されている背景にはどんなことがあるのでしょうか。先ずは以下の点が考えられます。

  • 留学生の中でも日本語教育機関に在籍する学生の数がもっとも多く、しかも急速に増加している
  • 他の教育機関では学生の一部が外国人であるのに対し、日本語教育機関ではほぼ全員が外国人
  • 学校の規模や管理体制が様々

参考:高等教育機関及び日本語教育機関に在籍する留学生の人数

  • 2025(令和7)年5月1日現在の外国人留学生数は408,069人(対前年度比21.2%増)
  • 中でも、日本語教育機関は140,174人(対前年度比30.7%増)
独立行政法人日本学生支援機構 外国人留学生在籍状況調査資料よりデータをグラフ化

学生を集めたい教育機関、お金を稼ぎたい留学生、人手不足の事業者という三者が揃えば、構造的に学習意欲が低い留学生も増え、アルバイトに明け暮れて本来の活動が疎かになる者も増えることは容易に想像できます。

留学生のアルバイトは生活費を補うだけでなく、実践的な日本語学習の場にもなることを考えると、良い面もあるのは確かです。日本語教育機関には、日本の大学への進学や、日本での就職など明確な目標を持って日本語を学ぶ、質の高い留学生の受け入れと適切な指導が求められています。

今後は政府内での情報連携も加速し審査に反映?

入管庁では2027年度からマイナンバーによる情報連携で留学生の所得情報を活用することにより、適格かつ厳格な審査を実施することも検討されているようです。これまでシステム的に連携されていなかった情報が活用できるようになれば、取り急ぎ人海戦術で運用強化を図っている日本語教育機関のみならず、専門学校や大学に通う留学生の中にも厳格審査の対象になる者が増える可能性がないとも言えません。

留学生のアルバイトについては、留学生本人、教育機関、雇用者それぞれが制度を正しく理解しルールに沿った運用を行うことがますます必要となっています。

参考:
資格外活動許可について | 出入国在留管理庁
「日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況調査」について:文部科学省
外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議