政府が検討中「日本語・生活学習プログラム(案)」

前回に引き続き、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」関連のトピックを取り上げます。本年(2026年)1月23日に決定されたこの総合対応策の中では「外国人が日本語や日本の制度・ルール等を学習するプログラムの創設を検討する」とされていました。その後、法務大臣政務官を長とするプロジェクトチームが設置され具体的な検討を行ってきたということで、このほど報告書がまとまり入管のホームページからの閲覧できるようになっています。その中から、気になった情報をかいつまんでご紹介します。

国の責任において、体系的なプログラムを創設

プロジェクトチームによる検討および報告書の目的は、学習プログラム創設に関する政府全体での検討を加速することです。つまり現時点では、まだいわゆる”たたき台”であり、プログラムがスタートした訳ではありませんが、報告書に書かれた内容をベースに、今後、政府全体での検討が行われ、詳細が決まっていくものと思われます。

この学習プログラムは、「秩序ある共生社会の実現」のために、日本で暮らす外国人の方が円滑に社会に適応できるようにするためのものです。報告書の中では、「国の責任において、体系的なプログラムを提供し、地方公共団体の負担軽減と受入れ機関による学習支援の充実」を図るというプログラムの方向性が打ち出されています。

「日本語学習」と「生活学習」

内容は、「日本語学習」と「生活学習」です。受講対象者は、中長期の在留を目的とする外国人を幅広く対象とすることが検討されており、特に生活オリエンテーション等の機会が乏しいと考えられるグループ(家族滞在等)へのプログラム内容の充実が課題とされています。一方で、高度人材の方などに対するプログラムの在り方や、既に学習が義務付けられている制度(技能実習/育成就労、特定技能)との関係整理にも留意することが必要とされています。

受講は在留審査へも反映する?

「国の責任において」というところには、学習教材を国が提供することの他に、学習の動機付も含まれていると考えられます。入国前・入国直後の学習においては、早期受講の動機付けとなるタイミングで在留審査へ反映することが予想されます。さらに、永住許可申請や一定の長期滞在を目的とする在留申請の際には学習プログラムの受講を許可要件とすることや、永住許可・帰化の審査においては理解度も確認することを検討するとされています。

地域や企業による支援水準の格差をなくす方向へ

近年、日本に滞在する外国人がかつてなく増えており、一部の外国人によるルールの逸脱や制度の不正利用が国民の不安や不公平感を煽っていますが、社会の分断ではなく共生社会を実現させるための施策の一つとして、国として体系的な学習プログラムを導入することが喫緊の課題であるとしています。

これまで自治体やボランティア任せになっていた学習機会の提供が、それでは立ちいかなくなっているという現実。また、講習の実施や学習支援が義務付けられている一部の在留資格の方々についても地域や企業による支援水準の格差があるとも言われています。こうした状況を踏まえ、報告書では「地方公共団体の負担軽減と受入れ機関による学習支援の充実」という視点が盛り込まれています。

今すぐ無料で利用できる有用なコンテンツ

実は国としても、これまでに外国人向けの日本語教材や生活学習ツールをいろいろと作成しています。しかしながら、それらの利用は任意であり明確な学習の動機付けがないこと、また、そういった学習ツールがあることがあまり知られていないという認知度の問題もあるようです。

例えば、出入国在留管理庁では「生活オリエンテーション動画」をYouTubeで作成しており、18言語で視聴可能となっていますが、在留外国人の方への調査では74.9%の方が「知らない」と回答しているとのこと。また、文部科学省が提供している日本語学習サイト「つなが るひろがる にほんごでのくらし(つなひろ)」では、アジア地域や南米で使われている言語を中心に、現在20種類の言語に対応した日常生活に役立つ日本語学習教材が利用可能となっていますが、これを「知らない」と回答した方が89.2%という残念な結果となっています。

有用なコンテンツが今すぐ無料で利用できるようになっているにもかかわらず、知らなかったために使っていないとしたら、とてももったいないことです。何か動機付けがないと自ら進んで学習時間を取ることはなかなか難しいかも知れませんが、これまで知らなかった方は、覗いてみてください。

既存の日本語・生活学習サイト

今後、「日本語・生活学習プログラム(案)」がどのような形で具体化されるのか、また、在留審査にはどのような影響があるのか、引き続き注目していきたいと思います。

参考:
外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する「法務大臣政務官PT報告書」(令和8年7月) | 出入国在留管理庁
つながるひろがる にほんごでのくらし(つなひろ)|日本語学習|文部科学省
生活オリエンテーション動画 | 出入国在留管理庁
外国人生活支援ポータルサイト | 出入国在留管理庁